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今回の対談は…
地域・サッカーとクラフトビール チームから見るガンバビール ガンバ大阪 亀井さん
クラフトビールと地域・サッカー ブルワリーから見るガンバビール 箕面ビール代表取締役 大下さん
サシノミとは・・・
私どもは2015年の立ち上げ以来文筆活動をしており、2019年より出版活動を行って参りました。日々飲み屋や自宅で酔っ払いながら、自分というフィルターを通して見えた世界を綴り、クラフトビールと呼ばれる何かに輪郭を与えようと必死になっておりました。それ自体は特に問題は無いのだけれども、一つ悩ましい問題に突き当たったことをここ最近強く感じます。
様々なことを調べ、考えていくと必ず「歴史的経緯」という、形は無いけれども確実に私たちに影響を与えているものがあることに気付かされます。平たく言えば、恐らくコンテクスト(文脈)ということになるのですが、およそ自明だと思われていることもかつてそうではなかった時代があり、それが何かのきっかけで変化し、転換しているのを知ることはとても意義があることだと思うようになりました。
眼の前の一杯が五感で美味しいと感じるのは事実として、それを「美味しいと感じさせる心的、文化的前提」が何によって構築されているのか。クラフトビールなるものがなんとなく良きものとされる根拠は何か。地ビールはいつクラフトビールになり、内包される意味はどう変化したか。たとえばこんなことを考えるのです。
私自身も社会を構成する一部であり、私というフィルターを通して現出する世界は社会を示すと考える一方で、部分が全体をどこまで正確に示すかについてはあまり自信がありません。私がこれまで書いてきたことは妥当性のあることだと今でも信じて疑わないけれど、それは私という名のフィルターの癖、偏りが多少なりとも含まれるはずです。そこに味があると言われればそれまでだけれども、異なるフィルターを通した時その結果は自ずと異なると理解しておかねばなりません。同じものを見て飲んで感じながらも、全く違った見解を持つ人がたくさんいます。「クラフトビール」という語が持つ意味は各人の持つ今日までの経緯によって異なるというわけです。
クラフトビールは日々の愉しみであったり、ビジネスであったり、社交の道具かもしれません。それが何であろうと良いのですが、しっかりと向き合った人の強い想いは他者を巻き込み、潮流の一滴としてシーンに対して多かれ少なかれ影響を与えていると思います。自分自身の興味関心を深掘りしていくこととは別に、その時々に人々が持った想いに何らかの形を与えて残すことに意味があるような気がしています。
海外の国からやってきた借り物の言葉や感情ではなくて、私たちがその当事者として真剣に思ったこと、それは名もなき市民のことであるから見過ごされがちだけれど、いえ、だからこそ、残しておかねば振り返ることも出来ず、迷子になってしまうことでしょう。いつ役に立つかは分からないものだけれど、必要になった時「あの時、こうだったね」と言えないよりは言える方がずっと良い。ただただそう思います。
本書「サシノミ」という企画は私とは異なる視点、異なる立場から眺めたクラフトビールシーンを記録するものとして立ち上げました。クラフトビール関係者はもとより、ビールを愛する一般の方も対象としてCRAFT DRINKS代表の沖が乾杯を通じて様々な角度から話を伺い、それを対話という形で記述していきます。クラフトビールという現象の過去から現在、現在から未来へと変化していく様態に輪郭を与えることが出来たらと願ってやみません。また、対話を通じて浮き彫りとなったクラフトビールに関する視点、論点を整理し、クラフトビールの新たな側面を模索していく試みとしても位置付けています。
クラフトビールに関する本だと言いながら、ビールの紹介もなく、ただただ酔っ払いたちが飲み屋で熱く喋っているだけの本ですが、そういう現場にシーンの本質の一端があると私は思います。クラフトビールはみんなのものだから。
今回はガンバビールを生み出したお二人にお話を伺いました。サッカーというスポーツと地域がクラフトビールを介して繋がっていく際、どんな人がどんな想いで関わっているのか、そしてそれがどのように飲み手へと伝わっているのかを知りたかったのです。スタジアムでガンバビールが提供される時、ガンバ大阪から見える風景と、箕面ビールから見るそれはどう映るのでしょうか。その風景の同一性や差異が大事な何かを示してくれるような気がします。それはきっと2024年の今を示すひとコマに違いない。
目次
はじめに 3
ガンバ大阪 亀井梨奈子さん 6
ガンバビールが出来るまで 6
サッカーチームの収益構造 10
サッカーと野球の違い、場外と場内 12
スポーツとエンタメ、クラフトビール 15
提供場所に関する苦悩 16
アップセル・クロスセル 19
購入に先立つアテンション、一回性の価値 20
ファンとサポーターの違い、クラブとの関係 23
良い記憶、時間、経験 24
まだ30年、もう30年 28
若者、熱狂的なファンとマーケティング 30
生まれゆくシナジー 33
Jリーグ開幕戦、スタジアムでガンバビールを飲みながら体験のことを考えた 35
箕面ビール代表取締役 大下香緒里さん 39
ガンバビールを始めるきっかけ 39
オリジナルビールを作るのは簡単? 40
これまでのガンバビールについて 41
サッカーとビール 43
箕面ビールとしてのメリット 44
スポーツ☓ビールの可能性 46
協業の形 49
若い人とお酒、地域とコミュニティ 51
2024年8月18日 COMITIA149にて発行
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